PCBシステム設計に求められるEMI解析環境

1. PCB設計におけるEMIノイズ問題

 前回のメルマガでは、EMI解析に関する3Dフルウェーブ解析の必然性(役割)について、お話させていただきましたが、実際のPCB設計では、回路仕様を満たすことだけではなく、基板の形状の制約、部品配置の制約、コストの制約、設計期間の制約、設計環境の制約など様々な制約があります。また、VCCI規格で規定されているEMIノイズの要件も満たす必要があります。
一般にPCBのEMIノイズは、①配線系に関するノイズ、②電源、グランドプレーンに関するノイズ、③両者が関係したノイズの3種類に大別することができると思います。

(1) 配線系に関するノイズ
配線の分岐、ビアの挿入、PKGピンからの引き出し時に良く見られる線幅の変更に関連した特性インピーダンスの不整合が原因で、配線の一部がダイポールアンテナの役割をすることによりEMIノイズが増加します。

(2) 電源、グランドプレーンに関するノイズ
理想的な電源、グランドプレーンを持たない場合は、リターン電流が複雑な経路を流れることによりループアンテナの役割を果たすことになり、EMIノイズが発生します。

2. EMI解析環境

 上記で述べた様々な制約事項を満たしつつ、問題箇所を素早く絞り込み、対策の効果を確認するためには、前回のメルマガでも述べたようなEMIチェッカーと3Dフルウェーブ解析ツールを使い分けることが一番現実的であると考えていますが、今回はさらに2.5次元電磁界シミュレータを含めた以下の3種類のEMI解析シミュレータに関しての長所・短所と、それらを組み合わせたEMI解析フローについてご紹介したいと思います。

①3次元電磁界シミュレータ:ANSYS HFSS
②2.5次元電磁界シミュレータ:ANSYS SIwave
③EMI抑制設計支援ツール:DEMITASNX

①または②を用いることで、実際の電源・グランドプレーン、信号線、ビア等を考慮して、近傍界・遠方界の電磁界の解析、表面電流密度、インピーダンス解析、基板のプレーン共振解析を行うことができます。

①は、3Dフルウェーブ解析ソルバによる高い精度で解析できるのが長所で、部分的な回路の特性解析を行うのに適しています。しかし、PCBのデータのような大規模な回路全体を解析したい場合には、①では計算時間が掛かりすぎるという課題があります。

これを受けて登場したのが②の2.5次元電磁界解析シミュレータです。2.5次元電磁界解析ソルバは、①より若干精度は落ちますが、プリント基板のような2.5次元の多層構造に特化したソルバであるため、①では計算時間が掛かりすぎて現実的でない大規模な回路全体を短時間で解析できるという特徴があります。

 ③のデザインルールチェッカは、予め設計ルールを登録しておき、配線やプレーンの形状データを元にチェックを行いますので最も短時間で計算を実行することが可能です。このとき設計ルールを自社でより有用なものとするために決めるために①や②を用いて事前評価をおこないチューニングしておくと効果的です。

3. PCB設計フロー

 前項のEMI解析環境が整っている場合の一般的なPCB設計フローを以下に示します。

日々進化するテクノロジに対応するため、様々な手法を検討されていると思います。
上記のように各設計フェーズにフィットしたシミュレータを、適材適所で適用する理想的なPCB設計フローであれば、ノイズだけでなく設計期間の制約もクリアできる理想的な設計環境と言うことができると考えています。

本日ご紹介した製品事例の資料は、こちらからご確認いただけます。
■ANSYS HFSSを用いたトレース配線とビアの最適設計 (HFSS.PDF
■ANSYS SIwaveを用いたPCBのEMI解析 (SIwave.PDF
■ANSYS DesignerSIを用いたSI解析 (DesignerSI.PDF


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